2015.06.01   民間伝承 ,,,,,,,,,,,,

尖った爪を研ぐ眼差しは、窓越しの遠い西日を向いていた。

踵だけを何十分も磨く機会はほとんどないが、この日だけは時間をかけて踵を洗う口実ができたようで。左右かまわず、どちらの踵も丁寧に時間をかけて磨くことになっている。ある一定のリズムで磨くことには少々飽き気味でありながらも、自分のペースを見事に裏切り、予想もできないほどの速度で動き出す両腕と小さな表情の変化を何度も思考の中で繰り返すのである。

今こうして自分が動くのは、この速度が心地よいと感じる自らの固定概念から派生しているものに過ぎない。願わくはもっと遅くてもかまわないわけであり、そうでなければ平穏な時間はいつまでも流れやしない。

薄い皮をめくるかのように、その尖った爪をじっくり研ぐことに没頭してもらいたい。窓越しに入る西からの日光にもめげることなく、志高き眼差しをどこまでも遠くに据え置いておきたいのだ。


槍の間合いもまだまだだな。