2016.01.07   視覚表現

ノーマン・マクラレン『色彩幻想』と『パ・ド・ドゥ』を眺める。

ノーマン・マクラレンが好きだと思っていたが、数年前に購入したノーマン・マクラレン傑作集『MORMAN McLAREN SELECTION』を実際に視聴していると、思った以上に作品内容を覚えていなくてあっさりと驚く。
よくよく考えてみれば、大学のアニメーション論でノーマン・マクラレン『色彩幻想ー過去のつまらぬ気がかり(1949年)』を紹介された、たった1,2分の出来事だけが自身の感動を誘い、その後のアニメーション制作における考え方をがらりと変えてしまったのだからおもしろい。

さて、思い出話はつまらない人間がすることなのでこの程度にしておきたいが、要するにノーマン・マクラレン傑作集を観たのである。パッケージの裏面なんかをみると見出しにはアカデミー受賞作「隣人」、カンヌ国際映画祭パルムドール「線と色の即興詩」など、代表作を集めた決定版と記され、やはり名誉とおまけに賞のお墨付きがあるティーザーコピーに勝るものはない。

とはいえど、このコピーそのものはノーマン・マクラレンが生み出したものでもなんでもないので、ここまで話題を広げても仕方のないことである。

数年ぶりに視聴しても、やはり色彩幻想

今回、約5年ぶりくらいにノーマン・マクラレン傑作集に収録された13作品すべてを見直したが、それでもやはり『色彩幻想ー過去のつまらぬ気がかり(1949年)』が好きだ。今になって思えば、BGMにオスカー・ピーターソンを起用していることもあり、抽象的な映像が好きでジャズ好きであれば、この選択はおのずと決まってくるものである。もはや申し分ない。

パ・ド・ドゥ(1968年)もおもしろい。

ただし、おもしろいのは『パ・ド・ドゥ(1968年)』もちょっと違った意味でたまらないということだ。何がおもしろいかといえば、こちらは色彩幻想の映像・音楽ともにテンポのよいリズムであるのに対し、写実的な人類の動きをなめらかに、クラシックで仕上げた作品であるということだ。画面全体も終始ブラック、動きだけをホワイトでじっくり表現したものである。見方の問題もあるが、BGM感覚で大きなスクリーンにさりげなく映し出してあげたい。


MORMAN McLAREN SELECTION

多様な技法でフィルムを自由自在に操り、アニメーション表現の無限の可能性を追求したマクラレン。カンヌ国際映画祭は、2006年にアニメーション作家としては映画祭初の回顧上映を行い、彼の功績を称えた。その際に上映されたマクラレンの代表作13作品を収録。


槍の間合いもまだまだだな。