2015.08.25   視覚表現 ,

クーナ「世界は目に見えるものだけでできてるんじゃないんだよ」

いや、本当はあと10分だけじゃなくてもよいのだ。例えばあと3分だけという言葉にすり替えても、この本題については何の変化もないのだから。時計をみたところ、たまたまあと10分で長い針が大きな数字を指すようだったのでこのような本題になったのだ。いや、もっと正確に話せば、私の目の前にある時計はアナログ時計ではなく、デジタル時計だ。長い針などどこにも見当たらならないし、そもそも時計すらないのである。要するに、イメージだけでつくれてしまう文章などゴロゴロとあるものなのである。見えているものだけが真実ではないということなのである。

見えているものだけが真実ではないで思い出したが、2013年に放送されていたフジテレビ系列のドラマ『ゴーイングマイホーム』はかなり良作だったと思う。「世界は目に見えるものだけで出来てるんじゃないんだよ」というセリフがあるように、クーナに教わったことも多々あったのではなかろうか。監督・脚本は是枝裕和。ドラマとは思えないほどのアングルの美しさとシーンのリズム感。しかも挿入歌にはゴンチチ。間違いなく今世紀にのこる名作だ。無駄なカメラワークもなく、基本的に固定で撮影されたゴーイングマイホームは、おそらく巨匠・小津安二郎以来の美しさを見受けられる。

あと10分だけ、もしもあと10分だけ時間があったら何をしようか。今の私であればゴーイングマイホームの1話をまるまる10分ほど観て身を清めたい。


槍の間合いもまだまだだな。